このブログにお越しいただき、有り難うございます。
兵庫県は伊丹市にあります、ケアミックスの病院の
リハビリテーション科に所属しています。
理学療法士、中井宏俊です。
私は3学会合同呼吸療法認定士の資格を持っています。
この資格は看護師、臨床工学技士の他に、
理学療法士、作業療法士も受験資格があります。
作業療法士は2014年から受験出来るようになりました。
それだけ、呼吸リハビリテーションの場面で
療法士が関わる機会が増えているということだと
私は認識しています。
そんな中で、聴診器を持つ療法士も
多いと思います。
私が愛用しているリットマンの聴診器です。
リハビリテーション科で共有されている物もあれば、
個人的に持ち歩いている方も多いでしょう。
私も自分の聴診器を持ち歩いています。
さて、ここで問題を提起します。
皆さん、聴診器をどう持ち歩いていますか?
こんな風に持ち歩いている方が
多いと思います。
これはドクターの画ですが、どうですか?
セラピストもこんな風に持ち歩いていませんか?
ドクターもこの持ち歩き方をしているので
特にこの首掛けに違和感がないと思いますが・・・
この持ち方、医療現場としては推奨ではありません。
どういうことか。
このような論文があります。
『診察後の聴診器と医師の手の汚染』
Longtin Y, Schneider A, Tschopp C, et al. Contamination of stethoscopes and physicians’ hands after a physical examination. Mayo Clin Proc 2014; 89: 291-9
この論文によると、
指先,母指球,小指球,手背,聴診器膜部,聴診器チューブの全好気性コロニー数中央値は
それぞれ467,37,34,8,89,18であった.
聴診器膜部の汚染レベルは指先の汚染レベルより低かったが(p<0.001),
母指球の汚染レベルよりは高かった(p=0.004).
聴診器膜部のMRSA汚染レベルは母指球の
MRSA汚染レベルより高かった(7CFUs/25cm^2 vs 4CFUs/25cm^2; p=0.004).
全好気性コロニー数およびMRSA CFU数の相関解析では,
聴診器膜部の汚染レベルは指先の汚染レベルと
関連していた(スペアマン順位相関係数 ρ=0.80; p<0.001,ρ=0.76; p<0.001).
同様に,聴診器チューブの汚染レベルは,
全好気性コロニー数およびMRSA CFU数の指先の汚染レベルの増加に伴い増加した(ρ=0.56; p<0.001, ρ=0.59; p<0.001).
患者さんに直接当てる膜部はもちろんのこと、
チューブの部分にも細菌が付着している、ということが
わかります。
そもそも医療従事者の首が清潔かどうかで考えれば、
チューブの部分にも細菌が増えやすいかどうかは
想像に難くないと思います。
ということで、今回はもう一つ
問題提起をします。
聴診器のチェストピースは清潔にしていますか?
聴診器の膜部の清潔操作について、
こんな論文があります。
『医師における白衣の交換頻度及び聴診器の消毒に関する多施設共同横断研究』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsei/29/4/29_14-007/_article/-char/ja
この中では、膜部の拭き取りをしているドクターは
大体40~50%くらい。
その中でも、患者さん毎に拭き取りをしているのは
20%前後。
ドクターでこれくらいの割合なんですが・・・
セラピストはどうなんでしょう?
私は患者さんに使った後で、その度に
アルコール綿で拭き取りをして、
ケーシーのポケットに入れています。
本当ならばケースに入れて持ち運ぶか、
そもそも患者さん毎に聴診器が用意されていることが
望ましいですが、業務効率やコストを
考えるとなかなか難しいところです。
(ICUやMRSAなど感染性の細菌に罹患されている場合は
患者さん毎に用意されたりしていますね)
完全滅菌は無理だとしても、
そもそも拭き取る必要があると
認識している療法士がどれだけいるでしょうか。
感染性の疾患が蔓延しやすいこの季節。
聴診器の扱いについても、見直してみませんか?
今回はここまでになります。
ここまでお読みいただき、有り難うございました。